帰宅すると、プンプンに怒ったナナがいた。
その怒りは寝る時まで治まらず、寝室に入ってからも犬用ベッドの上で
私に背中を向けて丸くなり、撫でてもなだめても、顔を上げようとしない。
そして台所に脱走しては連れ戻されるという事を繰り返していた。
雨や雷で台所に行くのなら、母も優しくしよう。
だが、ワガママでそれをするのは許すまいよ。
寝室から脱走しようとするナナを抱き上げて、無理やり布団の上に横倒しにした。
いとも簡単に、こてっと倒されたナナを見るとイビキをかいている。
???な私。
顔を覗き込むと、本当に眠っているように見える。
打ち所が悪かったのか?
それとも、眠いのを我慢して意地を張っていたのか?
それにしても、そんなに瞬間的に眠れるものなのか?
ナナは、夜中1度も起きることなく朝まで寝ていた。

一夜明けると、ご機嫌なナナがいて
昼の散歩も母の少し後ろを歩き、それはそれは素直な聞き分けの良い子になっている。
いつもはナナが先頭で歩くのだが、今日は頭1つ後ろを歩いている。
右に曲がると言えば右に行き、車が来たよと言えば道路わきに寄ってきちんと止まる。
私の顔を見上げながら歩くナナの顔は、とても穏やかで
たぶん今日なら、何かの大会に出て優勝できるかもしれないと思う程だ。
(やはり、打ち所が悪かったのか?)
気づけば長い散歩になっていた。
ふと後ろを見ると、疲れきってヘロヘロ歩きになっている拓さんが・・・
ナナがあんまり良い子なので、母はリードを手に持たず腰に付けて歩いていた。
ナナと並んで歩き、スピードを上げたり右だ左だと言葉で指示するだけだった。
拓さんは、必死に付いてきたのだろう。

拓さんは今、泥のように眠っている。
ごめんよ拓さん、あんまり散歩が楽しくて拓さんの事忘れてたよ。
ゆっくりお休み。